「慣れ」や「日常」と、どう向き合うか。そこと向き合うことが大切。

私がこの世に生まれてから36年の歳月が過ぎました。

幼少期は目に映るもの全てが珍しく、世界が輝いているように見えました。

外で遊ぶのも、学校へ行くのも、近所のデパートに行くのも、初めてのことばかりでただ、ただ楽しかったんですね。

また私は田舎出身で今は東京に住んでいますが、この東京に初めて出てきた時、それは確か小学生の時でしたが、そこにはこれまで見たことがないものが立ち並び、目に入るもの、聞くもの、触れるもの、全てが新鮮で、心躍ったことを覚えております。

こんなにも素晴らしい世界があるのかと思ったほどです。

しかし歳をとり、色々なことを経験し、それが積み重なっていくうちにそのような新鮮さは薄れ、感動を覚えることも無くなってしまいました。

慣れてしまうわけです。

大人になるというのはつまらないものです。

それまで世界があんなにも輝いていたのに、それが失われてしまうわけですから。

それは繰り返しになりますが、心が慣れてしまうせいです。日常化していってしまうせいです。そんな日常の中で心をときめかせることは難しいですね。ときめくわけがない。

しかし標題にもあるように、それがどんなに日常的でつまらないものだろうと、ここ以外の世界はありません。

我々にとってはこの世界が全てなのです。つまりここはこれ以上も以下もない世界なのです。

その世界に生きている我々なのです。

今は日常で、とてもじゃないが楽しいとは思えない。今の生活。

しかし当時こんな世界にも心が躍っていたことを思い出してみてください。あの時の世界と今の世界、何ら変わっていません。

世界は常にここだけで、またいつもこれ以上も以下もなく、そこで待ち構えているわけです。

そこに難癖つけたり、飽きたといって偏屈になったりするのは人間の勝手だということです。一方でこの世界に対し素晴らしい、楽しいと評価するのも人間の概念がやっていることです。

世界はいつもこれ以上も以下もない。ただただそこにあり続ける。

またこの世界もそうですが、そんな世界で生きる自分も、自分の周りもこれ以上も以下もないということです。

「ここ」で、「自己」に親しむこと。つまり「坐禅」ですね。これはまさにこれ以上も以下もない生き方です。この世界に生きる者にとって、これ以上も以下もない生き方だということです。なぜならそこには全てが含まれているからですね。この世界の正体、命を全身にいただいているからです。

あるいは「ここ」で「足を組むこと」がこの世界の正しい生き方だとも言えるかもしれない。

世界はどこを切り取ってもこれ以上も以下もないわけです。またどこにいてもこれ以上も以下もない場所なのです。

そこで聞こえること、目にすること、香ってくること。

これらも全て、これ以上も以下もないものなのです。

話を覆してしまうようで大変恐縮ですが、仮にこの世界の他に別の世界があったとしてもいいです。私にはそんなことわかりません。この世界だけだと言い切れる根拠も何も持ち合わせておりません。

しかし今、ここ、この自己、この足の痛みは紛れもなく真実だということです。その足の痛みは確かな痛みで、宇宙いっぱいの痛みであり、他と比べようのないものだということです。真実をあるいは宇宙いっぱいをいただいているということです。世界がどうだとか、いくつあるだとか、そういう物差しが不要になってきます。またそのようなこだわりがバカらしくなってきます。

どうしても我々には慣れがつきまといます。これが大敵です。

そのせいで、これ以上も以下もない世界を難癖つけたり、評価しようのない世界を評価しようとしてしまうからです。

しかし今でも見知らぬ土地にいったり、海外にでも行けばちゃんと心は踊る。感動するはずです。

要は慣れてしまったか、慣れていないか、その違いなんです。

世界はいつどこにおいてもこれ以上も以下もないわけです。

例えばそこでも足を組む。すると慣れたとか慣れないとか、人間の私情に関係なく、足が痛くなってきます。

ここに親しむんです。これを行うんです。それが本来を取り戻す術です。この坐禅が本来だと言われる、仏行だと言われる所以です。

慣れようが慣れまいが関係ない。足を組むことで私情に騙されずにすみます。本来を取り戻すことができる。

幼少期の時、都会に出て心躍ったあの当時と同じように、この世界を愛せているような、そんな気がするものです。

人間にとって大切なのは坐禅です。我々は常に恵まれた世界を生きていると、常にこれ以上も以下もない世界を生きていると思い出させてくれるのが坐禅です。

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