「永平寺」の1日

ここでは道元禅師が開かれた「永平寺」での修行生活の一日を分かりやすくご紹介しています。

この道場に集う者達は将来立派な住職になる為に全国から集まった志ある者たちです。

修行生活に入ったら厳しい修行生活をこの永平寺で過ごす事になります。

今までの生活とは180度違う、携帯電話も使えない、外に出る事も許されない生活です。

しかし、何世紀も前から変わらない厳しい修行生活があり、それを乗り越えた者だけが立派な僧侶になれるわけです。

その修行生活は現代でも変わらないままです。

尚、この記事は「別冊太陽 道元」監修角田泰隆 平凡社を参考に執筆しています。

¥2,145 (2021/04/29 17:38時点 | Yahooショッピング調べ)

修行生活に入る前に

日刊県民福井さんのツイッターより

新人の修行僧がこの禅寺での修行生活に入る前にはまず「地蔵院」へ向かいます。ここは本山の麓にある場所で、ここで、古参修行僧から禅寺での生活の仕方を何日間かかけて学びます。

その後、本山の山門へ向かい、古参和尚様から「尊候らはなぜこの道場へ来たのか」と聞かれ、我々新人は問答をその古参和尚様と行います。

そこで長い問答の末、認められた者だけが本山での修行への入門を許可されます。

ここから本格的な修行生活が始まります。

実際にここから本山での修行生活を簡単に見ていきましょう。

永平寺の修行

振鈴

別冊太陽「道元」P4より

永平寺の1日は起床の時を知らせる「振鈴」の音で始まります。

3時半(寒い、時期は四時半)、まだ暗い僧堂をスタートした「振司」と呼ばれる担当者が二手のルートに分かれて鈴を鳴らしながら全速力で広い伽藍の廻廊を走り抜けます。

この「振司」と呼ばれる役職は1年目の修行僧が主に行います。

洗面

別冊太陽「道元」P6より

振鈴後、修行僧達は素早く寝るのに使用していた蒲団を丸めて、僧堂裏の洗面所に向かいます。

作法に従って歯を磨き、顔や頭、耳の中まできれいに洗います。

その「洗面」で使うのに許される水の量は桶1杯と決まっております。

また、その時に着ている衣を濡らさないようにしなければいけないのですが、そのために「洗面手巾」と言われる洗面する時専用の格好をしなければいけません。

坐禅

別冊太陽「道元」P8より

「洗面」が終わると、修行僧達は速やかに僧堂に戻り、自分の「単」と呼ばれる席に向かい、「坐禅」を始めます。

黙々と起床から洗面、坐禅を行う訳ですが、この間一切の会話は許されません。

坐禅は通常、朝(曉天坐禅と呼ばれる)と夜(夜坐と呼ばれる)に行われます。

1回、大体40分程です。

修行僧1人に与えられた「単」は畳一畳の広さで、ここで坐禅、食事、就寝の全てを行います。

諷経

別冊太陽「道元」P10より

「諷経」とはお経を唱える事です。

坐禅が終わると、役寮(修行僧を指導する先生のような方)から修行僧まで法堂まで集まり、朝の「諷経」を行います。(朝課)

200名近い修行僧が一堂に会し、その読経(お経の声)が山内に響き渡ります。

「諷経」は一日に三回、朝課以外にも昼頃に行う「日中諷経」、夕方に行う「晩課諷経」があります。

行鉢

別冊太陽「道元」P15より

「諷経」が終わると、大衆(修行僧達のこと)は各々の寮舎に戻ります。

そして食事の準備を整った合図と同時に僧堂へ向かいます。

そして僧堂で「行鉢」を(食事)行います。

先ほどの坐禅を行った「単」へ向かい、単の上で坐禅を組み、お食事を頂く「応量器」を広げ、食事が給じされるのを待ちます。

食事の準備が整ったら、「五観の偈」と呼ばれる食事を頂く際に唱えるお経を唱え、作法に従って頂きます。

「応量器」の並べ方や、食べ方など細かい所まで作法が決まっており、「食事」をとるのも厳しい修行の一つです。

作務

別冊太陽「道元」P18より

「行鉢」が終わると、廻廊掃除などの「作務」が始まります。

この「作務」も「坐禅」や「諷経」、「行鉢」と同じく大切な修行の一つです。

毎日行われる廻廊の雑巾がけは、真冬でも手がしびれる程、冷たい水でやらなければなりません。

その他にも「作務」は境内の掃き掃除、草むしり、雪囲い、すす払いなどもあります。

永平寺の1日(時間軸グラフ)

3時半~ 振鈴(起床)
3時半~3時45分 洗面
3時45分~4時半 坐禅(曉天坐禅)
4時半~7時 諷経(朝課諷経)
7時~8時 行鉢(小食)
8時~11時 作務
11時~12時 諷経(日中諷経)
12時~13時 行鉢(中食)
13時~16時 作務
16時~17時 諷経(晩課諷経)
17時~18時 行鉢(薬石)
18時~19時 講義
19時~21時 開枕(就寝)