現代において、安心できる場所はなかなか見つからないですよね。
安心ってそもそもなんでしょうか？
私はその際「実際に身を預けることができれば」、それが安心だと思います。
要するにその「実感」です。「体験」です。それは確かに身を委ねられている状況だと言うことです。
しかし身を預けるためには、そもそもそれが確かに存在していなければなりません。
でないと寄りかかることが実際にできないからですね。
そこでいうと、おそらく概念にはその役は務まりません。
なぜなら概念というのは確証がないからです。あやふやな存在な割には、人の脳内を支配しており、また人々によってその姿形も変えます。差し出そうと思っても差し出せない、とにかく厄介なやつです。
その概念は確証がなく、寄りかかることができません。
なのでお金による豊かさ、財産、喜び、権力そういったことは本当の安心ではないということですね。
絶対的なもの。実際に存在するもの。本当の安心をいただくためには、これでなければならないわけです。
それではその絶対的なものとは何か？
それが実は身近にあります。つまりそれは「自分」という存在のことなんですよね。
今ここに「私なる」人間がおります。それはおそらく誰にとっても確かなことでしょう。
またそこにおいては屁の貸し借りすらできない、そういう命をいただいているわけです。
そこでの屁は誰かが俺の代わりにしてくれるわけではない。自分でこくしかない。本当に不便ですよね。
それは自分にしかできない、自分だけにしかできない。絶対的なものです。
そう、冒頭の「絶対」がここにかかっているわけです。
絶対的なものというのはこの自分。またそれを証明しているのがこの自分でこいた臭い「屁」なんです。
焼肉を食べた後の屁なんて最悪です。臭くて仕方ありません。
そこでこいた屁。臭くて仕方がない屁。
いずれでも自分の屁というのは自分でこくしかありません。そう仕組みで自分はできている。それが私という存在なんです。
屁だけではありません。食事も、消化も、排泄も、なんでも。この私が起こす命の現象は紛れもなく、私にしかできないことです。
誰も自分の代わりに屁をしてくれたり、食事をしてくれたり、排泄をしてくれたりしません。ここでは全てを自分でやるしかないわけです。
自分のハンドルは自分で握るしかないとでも言えましょう。
我々は常にこういう宿命にあるわけですが、しかしこれが実は安心なんです。本当の安心なんです。唯一我々が寄りかかりことができる部分なのです。身を預けることができる媒体なのです。
誰も自分のハンドルを握ってくれない。誰も自分の屁をこいてくれない。これだけは絶対的なことなんです。
誰にとっても絶対的なもの。それは確かにあるわけです。
また自分で屁をこく。何かを食う、寝る。こうした今の私における生命活動、どれをとっても代えのきかない行為です。このようなことを「坐禅」と言います。自分が自分を自分する。自分のハンドルを自分で握る。生命の実物。言い方を変えればこの世界の真実。仏の真実。この世界に存在している唯一のもの。それが坐禅です。
足を組むこと。それはこの世界を紛れもなく生きると言うことです。この世界での使命を全うすると言うことです。この世界における我々の本来のあり方のことです。
あるいは自分が今こうしているだけでも、誰もが常に代えのきかない絶対的な命をいただいているわけです。
自分が今こうしている間が「坐禅」だと言うことです。
坐禅を組むこと。この自己の動きだけがこの世界の唯一のものです。
それに親しむこと。自分に親しむこと。坐禅を行うこと。これだけが我々にとっての「「生死」のわけですね。
だから道元禅師は坐禅をおすすめになるわけです。
いつでもどこでも自分がいる。自分から離れることができない。自分の屁は自分でこくしかない。安心がずっとそばにある。仏がずっとそばにある。
安心することがなかなかできない現代ですが、それでも誰もが常に安心の真っ只中にいるわけです。
どこでも安心して生きていけばいいのです。
自己に親しむ。そんな自己がめぐる人生を楽しむ。このように生きることが我々にとって安心できる生き方なんです。
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