道元禅師にまつわる「言葉」のエッセイ。
今回は「衣鉢(えはつ)」についてお送りいたします。
筆者のつたないつぶやきとして、楽しんでいただければ幸いです。
こんにちは「harusuke」と申します。
2012年駒澤大学卒業後、禅の修行道場で修行経験を積み、現在は都内に暮らしております。
さて、我々は寝て起きると「昨晩食べたもの」がきちんと消化されています。
それではその食べたものを寝ている間に消化してくれたのは果たして「私」でしょうか?
ようこそ、真実を探求するブログ「禅の旅」です。
衣鉢とは
「衣鉢」と書いて「えはつ」といいます。
そもそもこの「衣鉢」とは「三衣一鉢(さんねいっぱつ)」ということですが、出家修行者が身に付けることができるものは、三つの「衣」と一つの「鉢」だけです。
その際の「衣」というのが「お袈裟」や「法衣」などのことをいい、「鉢」というのが、修行僧がお食事を頂く際に使ったり、「托鉢」の時に使ったりする「鉢盂(食器)」のことをいいます。
「三つの衣と一つの鉢」ということで、修行僧は本当に必要最低限のものしか持つことが許されていないんですね。
衣鉢を継ぐとは
また「衣鉢」はお釈迦様から摩訶迦葉尊者、そしてインドから中国へ仏法をお伝えになった達磨様など、今日に至るまで師匠から弟子へ法を伝えるときに、そのしるしとして伝授されてきたものです。
例えば1987年に出版された五味康祐さん著の『柳生天狗党』の中には次のような言葉がでてきます。
昨夜よりつくづく眺めて参ったが、亡き柳生十兵衛が衣鉢を継ぐほどの者、当然とは申しながら、よう切ってある
このように師匠から弟子へ「奥義」が継承される際や、事業が継承される際になどに使われることがあるようです。
しかし繰り返しになりますが、本来であれば弟子へ法を伝えるときに、そのしるしとして伝授されるのがこの「衣鉢」であり、「衣鉢そのもの」が伝授されるわけです。
この「衣鉢を継ぐ」というのは大変なことで、仏祖正伝の象徴としての重要な意味を持つのです。
なので「法を伝える」という時には「衣鉢を伝える」と言い、弟子が「衣鉢を継いだ」というのは、「正伝の仏法」を引き継いだという意味になるのです。
大変重いものなんですね、この「衣鉢を継ぐ」というのは。
因みに今「禅」というのは世界を巻き込む「トレンド」となっておりますが、この「衣鉢」を英語でいうと何て言うかわかりますか?
正解は「mysteries of one’s master’s art」で、「衣鉢を継ぐ」とは「to initiate one into the mysteries of Buddhism」と書くようです。
これに関しては果たして本当かどうかわかりません、、笑。
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