一転語とは?

一転語

道元禅師にまつわる「言葉」のエッセイ。

今回は第⑭弾といたしまして、「一転語」についてをお送りいたします。

筆者のつたないつぶやきとして、楽しんでいただければ幸いです。

この記事を書いているのは

こんにちは「harusuke」と申します。

2012年駒澤大学卒業後、禅の修行道場で修行経験を積み、現在は都内に暮らしております。

さて、我々は寝て起きると「昨晩食べたもの」がきちんと消化されています。

それではその食べたものを寝ている間に消化してくれたのは果たして「私」でしょうか?

ようこそ、真実を探求するブログ「禅の旅」です。

目次

一転語とは?

一転語とは

「一転語」とは、日常の常識的な分別の世界をひっくり返して、人々にさとりを開かせる契機を与える「一句」のことです。

この「一転語」は、古くから存在していた「言葉」ですが、現代では例えば「禅語」として皆さんの目に触れる機会が多いのではないかと思います。

「人々にさとりを開かせる契機をあたえる一句」とありますように、現代における「禅語」もせわしく生きる人々に「気付き」を与えるものでもありますから、両者は同じような意味合いで使ってもいいように思います。

現代の人々に気付きを与える一転語、禅語一覧

現代の人々は本当に生き急いでおりますし、日常に忙殺されておりますから、例えば次のような「一転語」、或いは「禅語」が気付きを与えてくれるのではないでしょうか?

一転語、禅語意味
脚下照顧(きゃっかしょうこ)全ては足元から。足元を整えればそれが、すべての進退は整う。また「自分自身(脚下)をよく振り返って反省(照顧)しなさい」という意味。
日日是好日(にちにちこれこうじつ)毎日が、かけがえのない日という意味。雨が降る日(嫌なこと)もあれば晴れる日(嬉しいこと)、もある。どんな日もかけがえのない日であるからして「好日」という意味。
知足(ちそく)「足るを知る」という意味。人間の欲望にはきりがない。そして自身の幸福を自身の価値観で捉え他人と比べてばかりいる。「いま、ここ、この自分」がすべて。足りないものなどなにもない。
一日不作一日不食(いちにちなさざればいちにちくらわず)「日々の行いが、そのまま仏法の修行であるから、一日の中で仏法にかなった行いがないときはご飯は食べない」」という意味。全ては仏法の為の命であり、仏法に生かされた日々であるから、その仏法にかなった働きを一日も忘れずに行わなければならない。
行雲流水(こううんりゅうすい)流れるまま。流されるま。空をゆく雲や川を流れる水のように、人間の善悪に執着することなく、行動するという意味。雲水とも言う。

このような「一転語」、或いは「禅語」は、いつの時代であっても概念縛りの我々人間に「気付き」を与えてくれます。

勿論このような「言葉の力」をなくして、日常のありがたさに気付ければ一番いいのですが、なかなかそのようにいかないのが現実のはずです。

偉そうなことを言っている私も、ことあるごとにこのような「一転語」、「禅語」に助けてもらっておりますしね。

しかし、実際本当にこのような言葉は「不要」だと思うんですね。

現代は特にこの「禅語」というものがフォーカスされがちですが、そもそも「禅」とは精神論ではないはずだし、そこで得た「気付き」や「安心」というのは本来の在り方ではないはずです。

真の「安心」は「生命の実物」を実践してこそ得られるものだと道元禅師はお示しになられております。

つまり「坐禅をして足が痛くなる」。これこそが本当の「安心」であるというわけです。

そのことを肝に銘じたいところではありますが、それでも普段から忙しくしている方は、こうした「一転語」や「禅語」が入り口となるのもまた事実。

大切な役割です。

一転語と道元禅師

道元禅師は『正法眼蔵随聞記』の中で、南泉普願禅師が大衆の前で「猫」を切り殺した話を取り上げております。

そしてその話をもとに弟子の懐奘禅師に対し、「斬猫は是れ即ち仏法の大用、或は一転語なり」とお話になられております。

つまり、「この南泉の斬猫は、仏法の偉大なる働きである。あるいは言い得ないところを言い表した、大転換をもたらす一転語である」と言われたのです。

この「南泉斬猫の話」は非常に有名なお話ですが、ここでは詳しく触れません。

ただこの「南泉斬猫の話」が沢山の仏道者の迷いを転換する、素晴らしいお話であるということを、この「一転語」という言葉を用いて弟子の懐奘禅師にお伝えになるんですね。

今回は「一転語」についてお伝えしました。

お読みいただきありがとうございました。

一転語

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