「生命の実物のしっぱなし」普勧坐禅儀に学ぶ⑰

こんにちは、harusukeです。

本記事では道元禅師がしるされた『普勧坐禅儀』について学んでいきます。

今回は、

心意識の運転を停(や)め、念想観の測量(しきりょう)を止(や)めて、

という部分を解説していきます。

それではまず初めに前回の、

のポイントを振り返りたいと思います。

前回のポイント
  • 道元禅師の言う「参禅」とは「坐禅」のことをさす。
  • 「坐禅」はしずかな場所で行うこと
  • 「坐禅」をする際は「腹六分目」が相応しい
  • 「坐禅」中は感覚はそのままにしておく
  • 「善悪」は時代によって変化し、「人」の価値観によって変化する。
  • なので「善悪」とは時なり

それでは前回のポイントをおさらいしたところで、本記事を読み進めていきたいと思います。

この記事を書いているのは

こんにちは「harusuke」と申します。

2012年駒澤大学卒業後、禅の修行道場で修行経験を積み、現在は都内に暮らしております。

さて、我々は寝て起きると「昨晩食べたもの」がきちんと消化されています。

それではその食べたものを寝ている間に消化してくれたのは果たして「私」でしょうか?

ようこそ、真実を探求するブログ「禅の旅」です。

普勧坐禅儀(訓読文)

所以(ゆえ)に須(すべか)らく言(こと)を尋ね語を逐ふの解行(げぎょう)を休すべし。須らく囘光返照(えこうへんしょう)の退歩を学すべし。身心(しんじん)自然(じねん)に脱落して、本来の面目(めんもく)現前(げんぜん)せん。恁麼(いんも)の事(じ)を得んと欲せば、急に恁麼の事(じ)を務(つと)めよ。夫れ参禅は静室(じょうしつ)宜しく、飲飡(おんさん)[飲食(おんじき)]節あり、諸縁を放捨し、万事を休息して、善悪(ぜんなく)を思はず、是非を管すること莫(なか)れ。心意識の運転を停(や)め、念想観の測量(しきりょう)を止(や)めて、作仏を(と)図ること莫(なか)れ。豈に坐臥に拘(かか)はらんや。

目次

思いに「ブレーキ」や「ストップ」をかけずにそのままにしておく

今回は、

心意識の運転を停(や)め、念想観の測量(しきりょう)を止(や)めて、

という部分を読んで参ります。

今回は、心意識の運転を停(や)め、念想観の測量(しきりょう)を止(や)めて、という部分をまとめて解説していきます。

冒頭の「停める」という字は「停止」の「停」という字です。

「ブレーキ」をかけることや、「ストップ」をかけるというようなイメージが湧くかと思います。

しかしここで言う「停める」というのはブレーキやストップをかける事ではなく、自然現象の在り方のままにするという意味で「停める」という風な言葉を用いているんですね。

頭の働きをストップする事ではなく、ありのままの姿に置く。

「おーい」と言えばとっさに返事をしてしまう。

意識せずとも鳥のさえずりが聞こえてくる。

そのような状態を「心意識の運転を停めた」と言うんですね。

我々は生きていると次から次に色々な思いが浮かんできます。

しかしそれは我々人間の頭のメカニズムとしては当たり前の状態であります。

自然の風景であり、命の躍動であります。

その自然の風景を止めたり、手を付けない、管理しない、そのままにしておく。

そのままにしておけば思いが次から次に湧いて出たとしても自然と消えてしまうんですね。

ほったらかしにすれば、いつの間にかどこかへ行ってしまう。

しかし我々はいつの間にかその自然に湧いた思いを「相手」にしてしまうんですね。

浮かんできた「思い」をまともに受けてしまうというか。

独り相撲をとってしまうんです。

「アイツが俺の事を悪く言った!」などと言って、自然に湧いた思いのあとをどんどん追いかけてしまう。

こうした「概念」と独り相撲しないというのが、「心意識の運転を停め、念想観の測量(しきりょう)を止(や)めて、ということであります。

生命の実物のしっぱなし

繰り返しになりますが、「心の動き」というのは私がやっている訳ではないんですね。

自然に湧き上がってくるものです。

この次から次に浮かんでくる思いは、「大自然の姿」そのものであります。

どんな下卑たる、破廉恥な事が浮かんできたとしてもそれが自然の風景なのです。

それに人間の手を施してはいけない。

その「思いを」我々の思いで管理してはいけないんです。

ほったらかしにしておくんです。

生きている事実はそのままにしておく。

生きている事実を「坐禅」として行じていく。

ですから「坐禅」は「身心脱落」であり、「悟りの姿」なのです。

決して「悟り」というのものは「心境」の話ではないんですね。

「いつも実物を行じていること」

それが道元禅師が言われる「悟り」であります。

なので「心意識の運転を停め、念想観の測量を止め」というのは「ブレーキ」をかけることでも「ストップ」をかける事でもありません。

思いに「ブレーキ」もしくは「ストップ」をかけるというのは、「思いを管理する」ということ。

そういった「管理」を一切手放す。

「生命の実物」のしっぱなし。

それが我々人間の目指す「悟り」であり、道元禅師のおすすめになる「坐禅」なのです。

だからこそ「坐禅」をする際はこの「心意識の運転を止め、念想観の測量を停める」という事を心掛けてくださいよ、という「坐禅」における心構えを道元禅師が説いてくださっているのです。

勝負するからには勝ちなさい。

余談をここで少しさせてもらえればと思います。

「仏教」では、生きとし生けるすべての命が、平等の価値であることを説いております。

しかしそれは小学校の徒競走のように、みんな手を繋いで一斉にゴールインするというような事を説いている訳ではありません。

例えば社会においては、サラリーマンは営業成績によって順番が付けられていく。

これは社会においては非常に大切な事でありましょう。

そうしたノルマを課さないと、会社は倒産してしまいますからね。

それに成績があがれば評価もあがり、自分の立場や地位も保障される。

ですから、命の平等さなんて忘れたかのようにみんなが他人を虐げてまで勝負に勝とうとするのです。

またこれは私があるお寺の友人の所で、ソフトボールをやっていた時の話です。

「坐禅」の余暇に戯れとしてソフトボールをやったら、その友人の師匠である老師に非常に怒られた事がありました。

その老師は、

真剣にやりなさい。やるからには勝ちなさい。

と言うわけですね。

なんで修行をこれまで長く積んだ老師ともあろうお方が、そこまで勝つことにこだわるのかなという思いがその時してしまったのです。

冒頭でも述べましたが、我々人間の命というものは一人一人平等で、尊いものである。

それは当然の事です。

しかしある営業マンであれば、売り上げが高ければその分会社から評価される。

或いは塾講師においては、沢山の子供達を一流高校、一流大学に入れたその比率によって保護者から評価される。

そのように社会においては人間同士で評価を付け合う事は当然であります。

何故なら我々は仏様に平等に生かされている「ヒト」であるのと同時に、人間社会においては「塾講師」でもあるわけで、「サラリーマン」でもあるわけだからです。

ビジネスマンとして、研究者として或いは親として、学校の先生として。

人間社会においてはヒトそれぞれが様々な肩書を持っているために成績や順番が付けられるのは当然であります。

しかし同時に、そのような「肩書」は人間社会においてのみ通用する「概念」だということが分かるのです。

それなのに我々人間は「人間の尊厳」というものを、「人間社会における成績」によって考えてしまう。

所詮は概念にしか過ぎない「肩書」を、人の命の尊厳に混合させてしまうのです。

あの人に営業成績で負けた、テストの点数で負けた、俺はもうだめだ、生きる価値無しだ。

そのように混同してしまうんですね。

これは過ちの考え方であるし、実にもったいない事です。

なぜなら「命の尊厳」はそのような「概念」とはまったく無関係だからです。

「命は平等」だと教わりながらがらも、その大切さをまったく理解できていない方が非常に多いんですね。

「概念」の延長に「命」を考えてしまう方が本当に多いんです。

そこをきちんと切り離して考える事ができれば、いくら他人と比較したり競争で負けるようなことがあってもいつでも笑っていられるはずです。

当時、老師は「ソフトボールやる時には真剣にやれ。そしてやる以上は勝ちなさい」と言われました。

その時は分からなかったですが、今思えば人間社会においての勝ちというのは「概念遊び」にしか過ぎなかったんです。

我々は社会で、その「概念遊び」をとことん楽しめばいいのです。

思いに「ブレーキ」や「ストップ」をかけずにそのままにしておく ーまとめー

すみません。

記事後半は余談となってしまいました。

今回は、道元禅師がしるした『普勧坐禅儀』の

心意識の運転を停め、念想観の測量を止め

という部分を解説しました。

それでは本記事の内容のポイントをまとめておきましょう。

本記事のポイント
  • 「停める」というのは思いに「ブレーキ」を掛ける事でもなく「ストップ」を掛ける事でもない。
  • 「ブレーキ」や「ストップ」をかけることは「思い」を管理している
  • 「思い」は生命の実物。
  • ただしい「思い」の管理はそのままにしておくこと
  • 「概念」は人間だけに通じる遊び

以上お読みいただきありがとうございました。

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