道元禅師にまつわる「言葉」のエッセイ。
今回は第⑩弾といたしまして、「安居(あんご)」についてをお送りいたします。
筆者のつたないつぶやきとして、楽しんでいただければ幸いです。
こんにちは「harusuke」と申します。
2012年駒澤大学卒業後、禅の修行道場で修行経験を積み、現在は都内に暮らしております。
さて、我々は寝て起きると「昨晩食べたもの」がきちんと消化されています。
それではその食べたものを寝ている間に消化してくれたのは果たして「私」でしょうか?
ようこそ、真実を探求するブログ「禅の旅」です。
安居とは?
「安居(あんご)」とは修行者たちが、「一定の場所」にあつまり、共同で修行生活をおくることを意味します。
この「安居」ですが、「パーリ語」のヴァッサ(vassa)の訳語で、他にも「夏安居(げあんご)」、「夏行(げあん)」、「坐夏(ざげ)」、「結夏(けつげ)」、「結制(けっせい)」と言ったりします。
夏の季語としての印象が強いこの「安居」ですが、仏教学者の「森祖道」さんがよまれた俳句などでも用いられる言葉ですね。
安居の始まりとは?
仏教のおこったインドでは、毎年6月半ばから雨季が始まります。
モンスーンの影響で非常に多くの雨が降るため、河川の水が増大し、出家者の修行生活におおきく影響します。
なので出家者たちはこの雨季が続くこの「3カ月間」は、一か所に集まり共同で修行生活を送るようになったということです。
またこの雨季の時期は草木は盛んに生い茂り、虫類も非常に多く発生します。
そんな草木や虫類を傷つけてはいけないということで、お釈迦様はこの雨期の遊行を禁止し、一か所に集まることをすすめられたのです。
これが安居の始まりとされるんですね。
ただこの「安居」の習慣は、当時のインドの他の宗教の間で行われていたものを、お釈迦様が自分の教団に取り入れたものだと言われております。
またこのような「安居」の習慣は、インドが発祥地で、そこから中国や日本にも伝えられていきました。
中国では、場所によって降雪がひどい所があるので、本来の「夏」だけでなく、冬季にも安居する慣習が生まれました。
また当時中国の「湖南省」では、青原行思禅師門下の石頭希遷禅師の「叢林」。「江西省」では、南嶽懐譲禅師門下の馬祖道一禅師「叢林」がそれぞれ有名で、多くの修行者達がこの「二大叢林」に集まって「安居」しておりました。
その際、このそれぞれの場所に因んで、この安居のことを「江湖会(ごうこえ)」と呼んでおったそうです。
日本では、684年に初めてこの安居が行われたと伝えられております。
その後江戸時代に入ってからは、各宗の本山で盛んにこの「安居」が実施されるようになりました。
今日でも、禅宗の道場ではこの「安居」が年に2回行われており、将来立派な僧侶となるべく若い雲水たちが毎年多くこの修行道場に集まり「安居」をします。
道元禅師と「安居」
道元禅師は『正法眼蔵』第72の中で、この「安居」に関して詳しく述べられております。
そしてこれは寛元3年(1245年)の6月のまさに「夏安居」の最中に記されたものです。
この「安居」の巻では、「安居」の意義、「安居」の歴史、「安居」の方法などが具体的に記されております。
とくに、「夏安居」に入る準備や、「夏安居」における諸行事、その際、読む「念誦」や「礼拝」の仕方まで詳しく説かれております。
当時の厳格さそのままに、永平寺などでは今日でもここにしるされている「安居」の取り組みかたを厳守しております。
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